尿に血が混じるということは、尿路(おしっこの通り道)のどこからか出血して尿に血が混じっているということです。尿路とは腎臓、尿管(腎臓から膀胱へ尿を運ぶパイプ)、膀胱、前立腺(男性)、尿道(膀胱から尿を出すパイプ)から構成されています(図)。これらの臓器から出血した場合、すべて血尿として症状が現れます。
血尿には大きく分けて肉眼的血尿(目で見て尿に血が混じっていることがわかる)と顕微鏡的血尿(目で見てもわからないきれいな尿であるが、顕微鏡でチェックすると血が混じっている)があります。
肉眼的血尿(目で見て尿に血が混じっている)の場合、どのような疾患が考えられますか?
肉眼的血尿は、小児や25歳以下の若年者を除くと、泌尿器疾患によることがほとんどです。以下に肉眼的血尿を示す可能性のある疾患を挙げます
1. 尿路上皮癌(膀胱癌,腎盂尿管癌)
2. 急性膀胱炎
3. 腎癌
4. 前立腺肥大症
5. 尿路結石症
6. 特発性腎出血
7. 腎動静脈奇形、腎梗塞、出血性膀胱炎、糸球体疾患、など
顕微鏡的血尿(目で見てもわからないきれいな尿であるが、顕微鏡でチェックすると血が混じっている、検診で尿潜血を指摘された)はどのような疾患が考えられますか?
肉眼的血尿をきたすような疾患であっても、出血量が少ないと顕微鏡的血尿となります。また、ヘモグロビン尿(体の中で赤血球が壊れたときに出てくる尿)、ミオグロビン尿(筋肉が壊れたときに出てくる尿)でも、尿潜血は陽性となります。精査の結果、明らかな異常はないが顕微鏡的血尿や尿潜血が陽性の場合をチャンス血尿(健診などで偶然発見された無症候性顕微鏡的血尿)といいます。
チャンス血尿が生命予後に影響するか明らかではありません。チャンス血尿例は非血尿例に比べて長期的には末期腎不全への進展リスクがあると考えられています。
精密検査で異常がなくとも、血尿が消失しないかぎり、泌尿器科的疾患の除外をふくめ、年に一度以上の精密検査が推奨されます。
血尿の精査にはどのような検査がありますか?
テステープによる尿潜血検査:尿の色が濃いときには肉眼的血尿に見えることがあります。まずは、テステープで、尿潜血、尿糖、尿タンパクの有無をチェックします。検診で、尿潜血を指摘された場合も、再度、尿潜血検査を行います。テステープのメーカーや種類によって、潜血反応の感度が違うので、結果がかわることがあります。
尿沈渣:採尿した尿を遠心分離して、沈殿した細胞成分、結晶成分などを顕微鏡で観察します。赤血球、白血球、細菌、などを正確に検鏡します。変形赤血球の有無もチェックします。
腹部超音波検査:腎臓、膀胱、前立腺などを観察します。診察室で簡易に検査できます。痛みやレントゲン被爆と言った心配もありません。癌などの腫瘍性病変、尿路結石など血尿の原因となるものを鑑別できます。
尿細胞診:尿路上皮癌のスクリーニングとして行います。尿路上皮癌は、男性では全悪性腫瘍のうちの約10% を占め、女性では約3%です。尿路上皮癌罹患年齢は男女 とも45歳ころから増加し始め、60歳以上で急に増加します。尿路上皮癌の危険因子として、40歳以上の男性、喫煙、有害物質への暴露、肉眼的血尿、泌尿器科疾患の既往、排尿刺激症状、尿路感染の既往などがあげられます。尿細胞診検査は検尿で採取した尿を検査に出します。病理の専門家が尿中にガン細胞が混じっていないか診断します。結果が出るのに1週間ほどかかります。
上記検査で異常がある場合には、診断を確定して、治療を行います。
尿潜血のみで、その他に以上を認めない場合にはチャンス血尿(健診などで偶然発見された無症候性顕微鏡的血尿)と考え、経過観察します。日常の生活に制限などはありません。