夜尿症とは
夜尿とは夜間寝ている間に排尿してしまい、尿をもらしてしまうこと(現象)です。夜尿症(おねしょ)の定義は 5歳を過ぎても月に数回以上の夜尿がみられる疾患とされています。夜尿症(おねしょ)は女の子に比べて男の子に多く、男児は7歳で11%、10歳で5%、女児は7歳で7%、10歳で3%に認めます。夜尿症は頻度の高い疾患です。
夜尿症でクリニックに相談に行くべきでしょうか?
日本では多くの夜尿症(おねしょ)のお子さん(約80%)が医療機関を受診したことがありません。「オネショで病院には恥ずかしくて行けない」と思われているご両親も多いです。また、病院に行っても、「しばらく様子を見て大丈夫ですよ」、「おねしょは病気でないから、、、」といわれるケースが多いようです。
一方、ヨーロッパではおねしょのお子さんの8割以上が治療を受けているといった報告もあります。
夜尿だけでなく昼間におしっこをもらしたり、尿に細菌がついて尿路感染を起こすようなお子さんは単なる夜尿症とは異なります。すぐにクリニックにご相談下さい。
夜尿症だけのお子さんも、幼稚園から小学校と学年があがってくると次第に自宅以外で泊まったりする機会もでてきます。夜尿症は恥ずかしいものではありません。おねしょのことが、気になって心配になりましたら、ご気軽にご相談下さい。
当クリニックでは夜尿症の専門医が診療を担当いたします。夜尿症(おねしょ)の治療だけでなく、夜尿症に合併する昼間の尿失禁(チビリ)、先天性の尿路(腎臓、膀胱、尿道)疾患の有無、神経疾患の有無に関しても診療いたします。また、これまでに夜尿症の治療を行ったが、改善がみられなかった患者様も、是非、ご相談ください。
佐々木クリニック 泌尿器科・小児泌尿器科
院長 白柳 慶之(しろやなぎ よしゆき)
日本小児泌尿器科学会認定医
日本夜尿症学会 理事
おねしょ卒業!プロジェクト委員会 実行委員
夜尿症のタイプと診断
夜尿症は“単一症候性夜尿症”と“非単一症候性夜尿症”二つのタイプに分類することが出来ます。単一症候性夜尿症は夜尿症以外の排尿に関する症状が無いもの言います。単純夜尿症と考えてよいでしょう。非単一症候性夜尿症は夜尿症に加えて、昼間の排尿回数が極端に多い(少ない)、我慢が効かない、昼間も尿をもらすなど昼間の排尿症状を伴うものを言います。一般に非単一症候性夜尿症は治りにくいと考えられていますし、ほかの疾患が潜んでいる可能性もあります。また、生まれてからずっと夜尿症が続いているものを一次性夜尿症、これまでに6ヶ月以上夜尿症が無い時期がありそのあとに夜尿症が再発したものを二次性夜尿症といいます。
“夜間寝ている間に排尿してしまい、尿をもらしてしまうこと”が平均して月に一回以上あれば夜尿症と診断します。夜尿症の診断でとくに重要なことは夜尿症以外の特別な病気がないことをしっかりと確認することです。
夜尿症の治療
(1)一般的な生活習慣の改善
昼間は十分水分をとって規則正しく(6回以上)トイレに行く習慣をつけるように指導します。また便秘をしないように食物繊維の多い食事を心がけるようにしてください。直接的効果は少ないのですが夕食後の水分は減らして寝る前にトイレに必ず行っているかどうかもう一度確認します。カフェインの入っている飲み物、多量の牛乳、ビタミンCの過剰摂取は控えます。生活習慣の改善に加え、現在行っている治療法としては以下のようなものがあります。
(2)おねしょアラーム
お子さんが5歳以上になっておねしょを治したいと希望するようであれば試みてよい条件づけ訓練法です。おねしょアラームは有効率が60−70%と高く再発が少ないので、おねしょの第一選択治療として世界的に認められています。残念なことに日本では保険適応ではありません。おねしょアラームは寝る前にお子さんのおむつやパンツに小さなセンサーをセットし(図)、夜中におねしょでパンツがぬれるとアラームが鳴る仕組みになっています。アラームが鳴ったら直ちにお子さんを起こします。しっかりと覚醒させるためにトイレまで連れて行き、おしっこが残っていれば完全に排尿させることをお勧めしています。おねしょをした直後に覚醒させることで治療効果が得られます。おねしょをしていない時に闇雲に起こして排尿させてもおねしょはよくなりません。アラーム治療は最低3ヶ月、治療を継続してから治療効果を判定します。効果が出てくると夜中に起きなくても朝までおねしょをしないでおしっこをためられるようになります。時間がかかり両親とお子さんの両方に根気と忍耐を要しますが、薬剤のような副作用が無く、再発率は比較的低いです。
(3)抗利尿ホルモン(ミニリンメルト、デスモプレシン)
おねしょをするお子さんの一部は夜間に多尿になっています。人間の体の中では夜間尿量をへらすために抗利尿ホルモンというホルモンが脳から分泌されていますが、夜間多尿の場合このホルモンの分泌が少ないことがあります。そのような場合は寝る前にこのホルモンを補ってあげると夜尿症が治りやすいです。薬を口の中で溶かす口腔内崩壊錠と鼻に噴霧するスプレータイプとがあります。半分以上のお子さんで効きますが、やめると元に戻ることが多いのが欠点です。ただしよく効くお子さんでは普段は使わなくても修学旅行などここぞという場合に使用してもらうことが出来ます。この薬を使うときは夕食後の水分は必ず控えるようにしてください。
(4)抗コリン薬(ポラキス、バップフォーなど)
この薬は膀胱に働いて膀胱の収縮を抑制しリラックスさせるはたらきがあります。それにより膀胱がためられる尿量が増えることが期待できます。膀胱の働きが不安定な昼間のおもらしには効くことが多いのですが、通常、単一症候性夜尿症において単独使用では効果がありません。他の治療と組み合わせて用いたりします。子どもでの副作用は少ないのですがときに、のどの渇き、便秘、動悸などを訴えます。
(5)三環系抗うつ薬(トフラニールなど)
この抗うつ薬は以前よりこどものおねしょ治療に用いられてきました。こどもでの副作用の報告は少ないのですが夜尿症に対する効果の発現や作用機序についてはよくわかっていない点があります。誤って大量に飲んで重篤な副作用を呈したことも報告されているため当院ではあまり推奨していません。